膝の関節は太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)の軟骨が向き合い、その間に内側・外側半月板がクッションとして挟まっています。関節の外から内側・外側側副靭帯が、関節の中から前十字・後十字靭帯が、大腿骨と脛骨を支え、滑らかで安定した膝の動きを保持しています。
1)膝の安定化
スネの骨(脛骨)が太ももの骨(大腿骨)に対して前方に動かないように制御します。
また膝をねじった際にもグラグラしないように制御しています。
2)膝の感覚をつかさどる
前十字靭帯は運動をする上で重要な膝のバランス感覚器としての役割もあります。
バスケットボール競技などにおけるジャンプの着地時や、
ターン動作などで生じる事が非常に多いです。
無理な力が急激に前十字靭帯にかかる事により受傷します。
その他にはラグビーにおけるタックルなどの大きな外力を直接、
膝に受けたときなどに受傷します。
余談ですが男性に比べて女性の方が2~3倍、受傷率が多いと
報告されております。
受傷直後では膝の腫れが目立ち、まれに強い膝の痛みで歩行が辛くなる事もあります。
しかし、1か月もすると腫れや痛みは落ち着いてきますが当然、
前十字靭帯は損傷、断裂したままなので上記の1)と2)の役割が果たせなくなります。
残念ながら前十字靭帯損傷(断裂)の多くは軽微な損傷を除き自然治癒する事は難しいとされています。
つまり、膝の不安定性、俗に言う膝崩れの現象に悩まさられる事になります。
若年者のスポーツ選手では尚更です。
徒手的な検査によって、膝のぐらつきを診察します。
画像検査ではMRIが前十字靭帯損傷(断裂)の診断に必須であると言えます。
受傷された患者さん自身が日常生活において、またはスポーツ活動においてどれだけのストレスを感じているか?
年齢や今後の活動性を総合的に評価し、患者さん以外にも御家族、スポーツにおいては指導者の考え等を充分にお聞きして手術を行うかどうかを決めています。
切れた靭帯同士はつなげることができないので、多くの場合太ももの裏の靭帯を前十字靭帯の代用として移植します(靭帯再建手術)。
基本的には膝に小さな穴をあけ、そこからカメラを(膝関節鏡)を挿入して行います。
傷はカメラを入れる為の1.5cm程の傷が2~3か所、靭帯を採取する為の5cm程の傷が1か所出来ると思って下さい。
解剖学的に元々あった前十字靭帯に沿うように太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)にトンネルを掘り、そこに代用する靭帯を通します。
術直後は膝が腫れる事もありますので安静を保ちます。
術後1週間で関節可動域訓練を開始します。
術後3~4週で体重を全てかけての歩行を許可しております。
早ければ3カ月でジョギング程度が一つの目安になります。(スポーツ復帰後も暫く装具は必要になる事もあります。)