病気が心配な患者さんへ
村山医療センター 医長
古川 満
内視鏡による椎間板切除術は1997年にFoley KTにより報告されています。それから20年間の進歩は目を見張るものがあります。2017年の脊椎内視鏡の手術件数は、約2万件であり、手術件数は年々増加しています。しかし脊椎手術件数が年間約13万件であることを考えると、まだまだ脊椎内視鏡手術は浸透しておらず手術可能な施設、症例は限られてくるというのが現状です。
皆さんが思い描く低侵襲手術とは、どのようなものでしょうか?
以下、我々が脊椎内視鏡を低侵襲と考えている3点を挙げさせていただきます。
1.傷口が小さい
肉眼的に行う従来法の手術では、50mm以上の切開が必要でしたが、内視鏡を用いれば、わずか18~20mmで済みます。
2.筋肉への負担が少ない
筋肉と筋肉の間からダイレーターと呼ばれるものを刺入していき、骨まで進入します。その後、レトラクターを取り付けて、カメラを装着することで手術視野を確保していきます。従来の手術方法に比較して神経の圧迫をとるのに必要な最小限の範囲しか筋肉を剥離しません。
3.入院期間が短く、社会復帰が早い
脊椎内視鏡手術は、入院日数が短いことが盛んに言われております。手術による筋肉の剥離する範囲が従来法より少ないため、入院期間や手術後の社会復帰は早いと考えられます。当院では、手術後の安静の必要性や合併症発生の有無を確認するため入院期間は、手術後1週間程度としております。
内視鏡を外筒管内に挿入し、内視鏡の映像を画像モニターで見ながら手術操作を行います。当院では、4Kモニターを使用しており、手術視野が非常に明快に見えるため、安全に手術を遂行できます。
脊椎内視鏡手術は、メリットが多いのですが限界もあります。
1.全ての脊椎疾患を内視鏡下で治療することはできません。→患者さん毎に症状や画像所見で内視鏡の適否を決めております。
2.カメラが出血で覆われてしまい、モニターが見えなくなってしまう困難なケースもあります。→我々は、あくまでも安全な手技で行うことを第一に考えておりますので、このような場合、躊躇なく従来の切開手術ほどの大きさまで皮膚を追加切開し、顕微鏡下での手術に切り替えます。
我々は、患者さんのご要望をお伺いした上で、脊椎内視鏡手術の適否を適性に判断させていただき、どの手術方法が一番、患者さんにとって最良の治療になるかを提案させていただきたいと思っております。