最先端医療
村山医療センター
藤吉 兼浩
頚椎症、頚部椎間板ヘルニア、頚椎後縦靭帯骨化症などの病気では、脊髄が首の部分(頚椎)の骨や椎間板で圧迫されて手のしびれや運動障害、歩行障害が出現します。放置しておくと箸がつかえなくなったり、ひとりで歩けなくなったり、ひどいときには自分の力で排尿することさえできなくなることもあります。ひとたび神経症状が進行し始めると、内服による治療ではむずかしく、神経の圧迫を取り除く手術が必要になることが多い病気です。 頚椎での神経の圧迫を除去する手術法はこれまでにもいくつか考えられ、報告されてきました。これまでの手術方法は頚椎の筋肉や骨への侵襲がとても大きく、術後にがんこな首の痛み(軸性疼痛)が残ったり、首の動きが悪くなって普段の生活に支障をきたしてしまう例が多くありました。
東京歯科大学市川病院の白石建教授は、これらの問題点を解決するために頚椎の筋肉をできうるかぎり温存して神経の圧迫を除去する選択的椎弓形成術(せんたくてきついきゅうけいせいじゅつ)を開発しました。この手術法は手術用顕微鏡を使用して頚椎後方の筋肉をできうる限り温存しつつ、必要な範囲の圧迫を確実にとりさることを可能にしました。
谷戸祥之:頸髄症に対する除圧術―skip laminoplasty. 脊椎脊髄ジャーナル 16(7):727-733,2003の図3,5より転載 (じっさいの手術の傷はこんなに大きくありません。3~7㎝になります。)
従来の手術法に比較すると技術的にも難しく、特殊な手術器具を使用するためまだすべての病院でこの手術が取り入れられているわけではありません。
当院の谷戸部長は白石教授とともに選択的椎弓形成術を開発したメンバーの一員であり、この術式の継承者のひとりです。 複数の施設においてこれまでに行われた選択的椎弓形成術 の治療経過を詳細に検討した結果、術後の合併症は従来法に比較するとあきらかに低くなっていることがわかりました。もちろんすべての頚椎の病気に対してこの手術法が適応されるわけではありませんが、若年者から高齢者まで広く適応される術式です。
詳しい内容をお知りになりたい方は当科外来(担当:藤吉、谷戸)にてご相談ください。