病気が心配な患者さんへ
村山医療センター 副院長
谷戸祥之
腰部脊柱管狭窄症は非常に多くの方が苦しんでいらっしゃる病気です。年齢とともに脊椎は変形していきます。それに伴って脊椎の中央にある脊柱管が狭くなり中に通っている神経組織が圧迫されることがあります。下肢痛や歩行障害、排尿排便障害などが発生してきます。村山医療センターでは年間400人以上の患者さんがこの病態で手術をうけています。
ではこの腰部脊柱管狭窄症に対する治療はどのようなものがあるのでしょうか。内服、理学療法などにより一時的に軽快することはありますが、加齢に伴って起きてくる疾患であり、根本的な治療は手術療法になります。手術的に狭くなった脊柱管を広げてあげることになります。
今回は当院で行われている脊柱管狭窄症に対する除圧術のひとつ、片側侵入両側除圧術について紹介いたします。この術式は基本的に顕微鏡を使用して手術が行われます。脊椎の片側の筋肉を剥離して侵入し、片側から両側の神経組織の除圧を行います。対側の筋肉や関節をまったく傷つけることがありません。
脊柱管狭窄症の手術では脊椎の後方組織をすべてとりさってしまう椎弓切除術が主流です。もちろんそのほうが術者にとっては簡単ですし手術はすぐに終了します。しかし後方支持組織を温存することで痛みの少ない低侵襲手術を行ったほうが患者さんのためになると考えています。手術後の変形の進行を予防するためにも極めて重要です。顕微鏡を使用し手間のかかる手術ですが、従来の手術でもこの術式でも患者さんへの費用の負担は変わりません。それでも手間をかけ、より低侵襲な手術を提供するのが脊椎外科医の矜持といったところでしょうか。